テストステロンとは男性ホルモンの一種で、筋肉の増大や第二次性徴時に男性的な身体の特徴の形成に作用するもの。薪割りをするとテストステロンの分泌が50%増加するとも言われていますが、「男性的な体つき」「老化防止効果」「性欲増強」といった効果を求めて、テストステロンをサプリメントや注射で摂取することも可能です。そんな保険が適用されないテストステロンに「若返り」「性同一性障害」の治療薬としての効果があるとして、実例とともにまとめられています。
56歳の元眼科医、ポール・キャンピオン氏のおなかは3年前まではたるんでいましたが、テストステロンのサプリメントを摂取し始めてから体型が変化しはじめ、現在は30代のころより引き締まった体型を維持しています。キャンピオン氏は3年前に「年齢管理」を専門とする医療系スタートアップ「Cenegenics」を訪れました。Cenegenicsはキャンピオン氏にダイエットトレーニングメニューと、テストステロンを処方。その後6カ月以内に、キャンピオン氏の体脂肪率は9%まで下がったそうです。
引き締まった体を手に入れたキャンピオン氏は、テストステロンの摂取を継続するとともに、医師としての専門を変えることも決意。その後はテストステロン・ドクターとしてクリニックを開業しています。なお、テストステロンはアメリカのほとんどのクリニックや病院で保険が適用されないため、全て患者の自己負担となります。キャンピオン氏のクリニックも例外ではなく、費用は初回のセッションで5000ドル(約60万円)、その後は月々1000ドル(約12万円)が必要です。患者は3カ月ごとに血液検査を行い、ホルモンバランスの推移を記録しています。かなり高額ですが、患者のほとんどは途中でやめることなく、テストステロンを続けているとのこと。
テストステロンの使用者たちは「エネルギー上昇」「筋肉増大」「体脂肪減少」「性欲増強」「健康生活感」といった効果を報告しています。自身もテストステロンの摂取を続けるキャンピオン氏いわく、「テストステロンは『老化防止薬』に近いものといわれます。リスクはほとんどの人にとって制御できるものです」と話しており、さらに「テストステロンは、驚くほど強力な効果があります。私が35歳のころに戻ったように」と話しています。アメリカでは60代の4%がテストステロンを摂取しており、2013年の販売量は1万4000kgに達しているほか、AbbVieの有名な「テストステロン・ジェル」は、年間10億ドル(約1200億円)を売り上げています。
上記のように若さを取り戻したい中年の富裕層に人気を得ているテストステロンですが、トランスジェンダーの悩みを抱える人にも有効です。実業家のコートニー・ジーグラー氏は、生物学上は「女性」ですが、社会的に「男性」として生きていました。医学的にも男性として生きるため、彼はテストステロン注射を始めたとのこと。投与から日を追うごとにジーグラー氏の体は男性的変化を見せました。ジーグラー氏は「私の顔や手足は大きくなり、声が低くなりました。月経が止まったほか、髪の毛が生える場所も変わり、著しい変化を経験できたのです」と話しています。この変化に伴って、体への痛みや負担などは特になかったとのこと。
3年間テストステロンを摂取するキャンピオン氏、および6年間の摂取を続けるジーグラー氏は健康上の問題を経験しておらず、テストステロンは肝臓で問題なく処理し続けることができると考えられています。ホルモン療法を専門とするクリニックで、医学的リスクについて説明を受けた上で、ホルモンバランスをしっかりと管理する必要がありますが、テストステロンが「病気のために処方される薬」として認められる日はそう遠くなさそうです。
引用元:GIGAZINE